『ハッカーと蟻』

1994/06/06 ジョン・ウォーカー執筆 第13章・エピローグ

6月15日(月)、新しくよりよい、ロボットと蟻なしの生活を再開するためにジャージー・ラグビーが出所した1週間後、ケイ・クーリッジはサンフランシスコ国際空港の出発ラウンジに座り、7:30 のスイス航空ジュネーブ行きの搭乗を待っていました。 彼女はインターナショナル・ヘラルド・トリビューンをながら見ていると 彼女のブリーフケースがピーと鳴り出しました。携帯電話を取り出して、彼女はアンテナを伸ばしていつものように電話にでました、
「どなた?」

「ロジャーだよ。調子はどう。 」

「信じられない、ロジャーなの。どうなってるの」 ケイはシューと音を立てました、 「電話を使ってくるなんて気が変だわ。」

「これは違う ― リスキーが特別に補強した暗号(クリプ)チップを作ってくれた。水槽の中でささやくほど安全だよ。書類事務は完了したかい。」

「ええ」 ケイは静かに返答しました、 「スイスの検死官から死亡診断書を得た後、私たちは昨日裁判所に備えた遺言を提出しました。彼らは、土地が国際投資信託に移るまで一週間程度だろうと云ってるわ。」

「ついに死んだ!」 ロジャーは言いました、 「生きてこの日を見られないだろうと思っていた。」 ロジャーは彼のサイバースペース・オフィスにて、大きな炉床(CAフレーム・ルールの燃える場所)に面したダークな木製の玉座に座り、可視スペクトルとホワイトライトのきらめく閃光の爆発の火花を出していました。彼の前で、平衡を保った後脚および厚く蛇状の尾、歯、外皮を形成する顎とひどくよだれを垂らす舌を持った4メートルのワニが、ケイの言葉を発話しました。数年前、ロジャーは動物磁気というちょっとしたハッキングをネットにポストしました、それは人の姿を誰かのタキシードとあなたの好きな生物に置き換えます。それは一時の流行でしたが今はニキビ面の原オタク(ナード)とロジャーにはウケていました。

音声強勢アナライザー・モジュールがいかに回想的にロジャーのよく知るものを生みだすか、彼はワニの弓形の目の瞬きとはげしく鞭打つ尾の音がケイの音声を戻すようで感心しました。 「ロジャー、どうすればこんなことをジャージーに対してできるんですか。彼はあなたの親友の一人だったんですよ。彼は殺されていたかもしれない。彼は残りの人生を閉じ込めれていたかもしれない。」

「さて、でも彼はそうならなかったよね。」 彼は頭をワニに向けて皮肉っぽく上に曲げて、身振りがケイに理解されられないだろうことを悟らず、ボディー・ランゲージの送信をたいそう制限する携帯電話で、ロジャーが尋ねました。 「実際、ジャージーには彼の最近の冒険が非常に良かったのだと言えるだろう。数か月前は彼はゴーモーションにおいて一人の賃金の奴隷ハッカーで、コードにおいて深く精通しようとも、彼はマネージャーをつくれなかっただろう。彼は、キャロルとの離婚で顔をゆがめ、ほとんどハッキングさえできなくなっていた。今彼は18本の超巨額のミニ・シリーズの取引をフォックスと持っているし…」

「どこでそのことを聞いたの?」 ケイは割り込みました。

「リスキーが私にちょうどサイバーメールしてくれた。スーザンが、彼らが今日の午後最終契約に調印したと彼に伝えたそうだ。私はちょうどゴーモーションの弁護士をよく知っており、彼らはジャージーの訴訟を1100万で示談にする準備をした。スーザンと弁護士が彼らの数キロの肉を取った後でも、シャルドネとクロワッサンをしばらくは彼に絶えず供給し続けるべきだ。」

「でもロジャー、」 ケイは金切り声を出しました(ワニは鼻孔を拡げて、ロジャーに蒸気を吹きかけました)、 「あの金はあなたの会社、ゴーモーションから出るのよ!」

ロジャーは続けました、 「ゴーモーション社は彼ら自身のための現金を持ち過ぎている、とにかく。自分たちのストックを買い戻して消し飛んでしまうより、ジャージーに払った方がましだろう。ところでケイ、今度スイスに入るとき、コートジボアールのパスポートを使い、空港で君の入国ビザのページに入管のスタンプを必ず押してもらいなさい。そのあと、今週遅くには君の在住許可証がおりるだろう。」

「そんなに早くは無理よ」 ケイが口を挟みます、 「ジャージーの訪問の件に戻りましょう。グレッチェンは私に彼の話を伝えた。それは実に陰惨 ― あなたの喉の大きな穴、蟻があなたの顔を切断した、エレベーターシャフトが落ちた。何がほんとうに起こったの。」

「ほとんどその不器用な人ジャージーが倒れて、エレベータから私を引きずるまで、私が計画したもの。なぜ彼がキャビンへ昇って、それまで悼んでいたロジャー・クーリッジを載せていた空の容器(船)を見なかったのか私には分からない。幸運にも、彼が私を引きずった時、プラスチック蟻は既に彼を攻撃しはじめ、そのため彼がホラー・メイキャップ(ローザンヌ大学の芸術劇場部から借りた)を近くで見る前に、私はシャフトへと逃げられた。私はかなり激しく着地し、でもうずくまり、ジャージーが近くを見ることができる前に、私は顔を下へ伸ばすことができた。」

「しかし爆発は? 火が…」 ケイは言いました。

「わからないかい、ケイ」 ロジャーが説明しました、 「すべてあの最終バトルは全てサイバーなのだ。リスキーと私は数週前から徹底的にあれをプログラムした。幸運にもリスキーは彼の自動車デッキから見て私のタキシードを、ジャージーと子供たちが来る前にエレベーターシャフトの底に置いて操縦・制御した。魚眼カメラは私の考えだ―それは単にロボット研究所サイバースペースの歪像された白黒の描写だった。私は何でも形にした、ありのまま、おめでたいジャージーが現実だと考えるように。チャンピオンのように仕事をした、ヒィヒィ。子供たちがくびを突っ込んでくるとは予想だにしなかった。それは実際にサイバー・シムを推し進めることになった―私はD&D オフィスを解決するのにずっと長くかかるジャージーを当てにしていた。彼はそのような不完全な、オンライン・ゲーマーです。それらは実際に工場でコンピューターによって運転された単にロボットだったが、プラスチック蟻はよいタッチだった。それらはジャージーを引き付け彼になにがおこっているかを見るにはあまりに近づき過ぎていた。」

「ロジャー、あの忌々しい爆発についてはどうなの!」

「分かった、分かった。彼ら[ジャージーとその子供]がアセトンで始めてナイスな納得できるker-whumpを造ったとき、ロボット研究所の窓の外に私は閃光発砲音の練習として手榴弾を放ったんだ。」

「いったいぜんたい、どこで手榴弾を手に入れたの。」 ケイはますます激昂して聞き、脅迫的にワニの尾は前後に鞭を打ち始めました。

「ここはスイスだ」 ロジャーは答えました、 「誰もが地下室に兵器庫を持っている。隣りの家に行って一つ借りた。彼にはじねずみ(a gopher)を取り除きたかったと伝えたよ。で、ジャージーはロジャー・クーリッジの恐ろしい死去を確信して帰宅した。そのとき私は州当局のところへ行き、テレビを破壊して責められるべき男がカントン州にて匿われていること(それは貧弱なPRにはなるかもしれない)について説明した。そしてどうして私が死んだこととこの物語に沿ってのこの小混乱につけこめないものか。もちろん、私の死は、私の遺産から約300万フランの相続税を納付しなければならないということを意味する。それでその嘘が少し滑らかに(事実として)進むだろうと確信してる。」

「そして今あなたは死んだ、私はただ消えるのね」 とケイは言いました。

「そう(生息)領域からまさにはずれる。そして付随的に、IRS[ Intenal Revenue Serviceなら国税局、international なら… ]の名簿とカリフォルニア税のナチス[?]からも。」 ロジャーは返答しました、 「家と工場は来週、コートジボアール市民のジーン-ミシェルとヴェロニーク・ランキンへ売られる。彼らはゴーモーション社ローザンヌ・オフィスにおいてアイアン・キャメルの北アフリカへのマーケティング・マネージャーとして最近仕事の許可を得ている」

「すなわちあなたと私。」 ケイは言いました、 「だから私たち、昨年アビジャンへ旅行したのね。でも聖-Cergue の誰もが、私たちを同じ人々だと分かるでしょう。」

「そう」 ロジャーは注意を促しました、 「でも彼らはスイス人だ。」 「彼らは自分のことに専念する。他の誰も暴いたりしない。その上、私たちは、私が考えうる限りはスイスの法律を破っていない、ゆえに最悪の事態が来ても、私たちが引き渡されることはないだろう。」

ケイは数秒間考えました、 「ロジャー」 彼女は続ける、 「私はジャージーのことが心配。彼はウェスト・ウェスト社を辞め、グレッチェンにハッキングはもうこりごりと云ったの。私は彼がニューエイジgoopy か何かになっちゃうのかと思うわ。」

「心配するな、ケイ、彼はハッカーだ。彼は、もう、カリフォルニア・ナメクジが新鮮な犬糞を通り過ぎるよりコードを避けることはできない。金のため働く必要が無くなっても、なにものも彼のハッキングの欲求を鎮めることなどできない。」

「分かったわ」 ケイはため息をつき、ワニの長い鼻が大ホールのアーチ型天井に上昇し、その目は同じ方角へ回転しました。

ロジャーは前に傾きました、 「また彼はついにキャロルを彼の後方に配し、彼は子供と一緒に戻り、グレッチェンに新しい炎を見つけた。ヴィンは昨夜私に云ったよジャージーはまだ彼の妹ンガとデイトしたがってる。これが新ジャージーのようだ。」

「ロジャー、ゴーモーション株の100万のシェアをあなたは所有している。なぜウェストウェストへジャージーを送ったの。あなたはうすっぺらな競合会社にあなたの仕事を渡したの」 ケイが言いました。

「私は彼がロボットを繁殖(ブリーディング)してもらう為彼を雇った。しかし実際の理由は、もしウェストウェストがROBOT.LIB とジャージーの人工生命アルゴリズムを持っていなければたとえアズが斧殺人ができるぐらい十分に強く十分に速かったとしてもアズはチョーボーイ[="使い走り"; ウェストウェスト社がプログラムしたロボット。パターン認識が稚拙で事故が起きた]のように終わってしまっだろうということだ。悪い評判が全パーソナル・ロボット市場を殺してしまう、ヴィープも含めて、ね。そのときさまざまな政府の安全規制が始まり、キットのようなものでも全ビジネスが抹消されるだろう。したがって、分かるかいケイ、たとえそれがヴィープと競争するようになっても、アズを動かすために私はジャージーをウェストウェストに送り込まなければならなかった。」

「あなたがそれをするためにテレビを破壊する必要はなかったわ」 ケイが注意しました。ワニはロジャーの前の床をゆっくり歩き始めました。

「そう、君は正しい、それが理由の一つだとしても」 ロジャーが答えます。 「私はテレビを破壊したくなかった。ただそれを数日間借りたかっただけ。 全計算機の力の98%以上は今、地球でDTV チップ上にある。蟻を世界のいたるところで解き放つことが蟻の進化促進への唯一の方法だった。全てのDTV チップを一度にすべて使用することが、蟻をゴーモーション蟻研究所の中でだけチップを使用するより、1億倍速く進化させた。」

ケイは割り込みます、 「何の為の進化?」

「まず、ひとつにはアズを市場から抹消させるほどヴィープを十分賢くさせるため。彼らは前カンブリア紀のレベルの進化に突入するだろう、そしてわれわれは白亜紀の脳とともに彼らから立ち去るつもりだ。しかし、本当の理由はムーンラッツだよ。」 ロジャーは彼自身に満足そうに結論づけました。

「そのムーンラッツって一体なんなのよ?」 ケイは尋ねました。ワニの中で表現された彼女の明らかな焦燥は、ロジャーの顔からその巨大な不潔な歯数センチを振り回しています。今度だけは、デッキに匂いカードをインストールしていなくて、ロジャーは嬉しかった。

彼女はえさに食らいつきました。ロジャーは長口舌を始めました、 「今から5年後欧州宇宙機関が無人月面車(ローバー)を発射する。彼らは地球からそれを遠隔操作する計画で、ソーラー・パワーでよい地点の近くを壊れるまで探査するよう想定している。問題はそう、彼らのデザインしたものがわれわれの旧式の酔狂なワゴンと同じくらい大きく、費用はほぼ10億ドルになる。そのため彼らは単に1台分の余裕しかない。そしてそれは馬鹿なのですべてを手動で操作しなければならない。だからもし誰かが制御し損じて、クレーターに落とせば、使命はそれで終り。」

ロジャーは息をついてから続けました、 「入札期限は9月中。ゴーモーションは彼らの予算を半分未満に抑え20台のローバーを月に送ると提言する。そのローバーは真空吸引の、ソーラー・パワーで動く、私がDTV チップで進化させた脳を持ったヴィープ-2 以外のなにものでもない。またかれらヴィープ-2 は自律で動くんだ、 ケイ。事実、かれらは好奇心旺盛で、月のあちこちをバップしてノンストップで興味あるものを本部へリポートします。」

「あなたにそれができるの?」 ケイは静かに聞きました。

「DTV チップのおかげで、できる。きみが戻ったら、シミュレーションを見せよう」 ロジャーが答えました。 「すぐに私たちがマイクロファクトリーを着陸させるようにESA かNASA を説得することもできます。かれらは自分自身を再生し進化させるのに必要ななにかを持ちます。私はサイバーCADでのモデルをすぐにも構築します。」

ケイは中断しようと試みたがなんの甲斐もなかった。ロジャーは巡航速度でいました。 「それは生命の目的、ケイ−それは明白な運命、なぜ宇宙は45億年を費やしわれわれを進化させたのか。 生命の灯火を時空の最も遠い辺境へと運ぶ種に渡すこと。見よ、ジャージーの子供たちは偉大だ、が、かれらの子孫は銀河の中心の最も内側の世界に生存しないでしょう、空虚の中心を通って激しい光から実在が描かれる、ブラックホールが全体の星を引裂きむさぼり食うのを見ること。私たちの意志。テレビなしの一週間は無価値か。なぜ、これはそう…」

「地球からロジャーへ、地球からロジャーへ」 彼が黙るまで、ケイは電話へばちばち音をたてました、 「搭乗時間です、行かなければ。離陸後、あなたに私からサイバーコールしましょうか。」

「いや」 ロジャーは答えました、 「それは安全じゃないし、機内で携帯電話は使えないよ。きみが明日ここに着くとき話そう。トニオに運転させて、空港で会おう。」

ケイはブリーフケースのラッチ(掛けがね)を弄くりました 「オーケー。 すぐにね、ジーン-ミシェル、ジュテーム(A bientot, Jean-Michel, je t'aime.)」

「月と私のヴェロニーク(A la lune, ma chere Veronique,)」 ロジャーは言いました。接続が切れ、ケイのワニ型タキシードが空中浮揚し、縮み始め、それまでの特徴をすべて平らにして滑らかな灰色だったものがバスケットボール・サイズの緑の泡に。そのとき、それは小さなポンという音とともに消えました。

ロジャーは指差し、蟻研究所へ逃れました。大きな仕事が待っていました。

2004/10/15
Mr.John Walker より翻訳掲載許可取得済。

2004/10/21
M.k.d.翻訳(Toshio Yoshizawa)
SPECIAL THANKS to Mr.John Walker, fourmilab, & Mr.Rudy Rucker,
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著者・Mr.Walker's Fourmilab ホームページ
http://www.fourmilab.ch/

『ハッカーと蟻』当13章・エピローグオリジナル(Eng.)頁
http://www.fourmilab.ch/documents/hackants13.html

『ハッカーと蟻』原作者 Mr.R.ラッカーSr.   (&Jr. )ポータルサイト
http://www.rudyrucker.com/


2005/04/05 加筆
2006/01/09 訳文以外削除
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